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名嶋 義直(なじま よしなお)[2章]

 

「2章 日本語教育学の体系化をめざして(2)―日本語教育関係者の社会的役割について―」

 

東日本大震災の被災者である名嶋が、その個人的な経験を踏まえて、日本語教育学に携わる研究者・実践家の社会的貢献について、どのように考えていけばいいのかを語っています。個人的な経験を色濃く出してほしいという編者の強い希望に応えてくれたものです。まず被災当時の状況として、日本人コミュニティと外国人コミュニティの分断が見られ、そのことから現在の日本社会が「多文化共生社会」とは程遠いとしています。また、被災から復興に向けてのさまざまな経験を通した自問自答の中から、ことばの役割とことばの研究・教育に携わる専門家の役割を再確認したことを語ります。そのうえで、原発事故によって多くの人々が従前の生活に変更を迫られたり、今も放射能汚染の影響を受けている地域があったりするにもかかわらず、再び原発を推進する言説が強化されようとしている現状に危機感をおぼえ、自らが専門とする「ことば」を用いて、権力に向き合うことの重要性を指摘しています。そして具体的な姿勢として、「人と人とをつなげ社会をつくっていく」ことと「現在の社会のあり様について常に問い直し、よりよいあり方を模索する」ことの重要性を主張しています。

(本書「はじめに」より)

 

東北大学大学院 文学研究科 教授

名古屋大学大学院国際言語文化研究科博士後期課程満期退学。博士 (文学)。

銀行勤務の後、日本語教師としてマレーシアに。受け入れ先の事情で不法滞在・国外退去となり、アジア放浪後に帰国。日本語学校の非常勤・常勤講師を経て大学院へ進み、2002年10月に仙台へ。2004年4月より現所属。ヒッピーでアナーキストでバイク乗り。当面は、批判的談話分析を中心に据えた姿勢で研究を実践していきたいと考えているが、最終的には、隠棲して自給自足をめざす。主な著書に『ノダの意味・機能―関連性理論の観点から―』 (くろしお出版, 2007, 単著)、『3.11原発事故後の公共メディアの言説を考える』 (ひつじ書房, 2015, 共編著) がある

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