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牛窪 隆太(うしくぼ りゅうた)[7章]

 

「7章 教師の役割と専門性を考える」

 

教師の役割と専門性について論じます。

まず、知識本の貢献として、多様な現場における教師研修のあり方を示し、日本語教師の成長にとって必要となる観点を提示して論じたことと、そこで論じられたことが、現在でも有効性を持つ議論であることが挙げられます。次に、日本語教育研究において、多くの場合「研究者=教師」という事情から、教師として教室活動に向き合うことと研究者として教室活動を分析するという異なる2つの社会的活動が区別されることなく無意識に「教師の成長」とされていることを指摘します。そして、教師の成長を支える内省モデルが、日々の授業実践をどうするかというレベルの内省にとどまりがちであることを課題として挙げます。のうえで、日本語教師に関する研究を、教師の能力・資質、教師の経験、教師養成に大別して概観します。それを踏まえ、日本語教師が、そもそも自分はなんのために日本語を教えるのかという根本的な問いを持つ必要性、教師が自身の教育観・人間形成観を批判的に問い直す必要性、教室の外部に関心を向ける必要性を指摘します。そして、教師一人一人が自分の実践を問い直すことが、日本語教育の枠組み自体を問い直すことにつながると主張します。

(本書「はじめに」より)

 

関西学院大学 日本語教育センター 常勤講師 

早稲田大学大学院日本語教育研究科博士課程修了。博士 (日本語教育学)。

タイ早稲田日本語学校 (副主任講師)、早稲田大学日本語教育研究センター (助手) を経て、現職。「学習者主体」概念について検討しながら、現場で教育経験を積むうちに、学習者の主体性を謳う教師の主体性のあり方について関心を持つように。現在は、日本語教師の関係性における学びを解明するべく、新人教師の職業参加プロセスについての研究を行うとともに、現職教師対象の研究会を実践している。主な論文に「日本語教育における学習者主体―日本語話者としての主体性に注目して―」『リテラシーズ』1 (くろしお出版)、「日本語教育実践において「主体的」が意味してきたこと」『リテラシーズ』10( くろしお出版)がある

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